紀ノ川 有吉佐和子 [小説]
女の力、というものを感じる。男の生き方にまで深く影響する、というよりも、潜在的な深いところで影響するのが女の力なのかもしれない。母親と娘という、嫁に出してしまえば切れてしまうかに見える、それでも互いに影響の大きい、いざとなったときには頼る、心の支えとなるつながりを根底に、大正から昭和、敗戦という時代背景の中で、家というものや結婚というものに対する価値観の移り変わりが描かれている。子供は必ずしも親の思う通りには育たない。それは遺伝にもよるだろうし時代背景にもよるだろうし環境にもよるだろう。それでも血のつながりというものを感じさせる。美しい嫁入りの風景や着物の描写にもうっとりしてしまう。
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