複合汚染 有吉佐和子 [社会問題]
小説なのか、随筆なのか、何なのか分からない。読み進んでいくうちに、周りにあるもの全てが怖ろしいものに思えてきてしまう。公害を顧みることのなかった高度成長期を経て様々な病気や不具合が生じてきたからこそ、消費者の意識が高まったのかもしれない。もっと早く意識が高まっていたら、とは思うが、政府が国民の健康をどれくらい考えているか、この小説が出た頃と変わっているかどうかは疑問だ。最近のアスベストに関して考えてみても。一定期間を経てそのポストを外れれば、責任は負わずにすむ。役人には、権益は利用しても、面倒なことは見ない振りをする事なかれ主義な人が多いと感じるのは私だけではないと思う。
今はもっと安全な社会になっていると信じたい。が、危険なものはまだまだたくさん潜んでいる。自分だけ気をつけても体の中には有害なものが侵入してくる。まだ日本人の意識は低いんじゃないか、役人に頼りすぎ、信じすぎなのではないか、自分たちで何とかしようとする気持ちが少ないんじゃないか、と思う。この話は、女の人でないと書けないものなんじゃないかと思った。食料にしても洗濯にしても生活に密着しているから。横丁のご隠居さんとの会話が、より分かりやすい説明となり、ホッとさせたり笑わせたりする、けれども素朴な疑問が鋭い指摘であったりする。
アメリカを幸福にし世界を不幸にする不条理な仕組み カレル ヴァン ウォルフレン [社会問題]
長いけどちょっと刺激的なタイトルにびっくりした。でも原題はそんなに刺激的じゃない。少し分厚くて、少し難しいと思ったけど、「そうなのよね」と同感するところも多々あった。分からないところは分からないままにとにかく読み進んでいったら、全ては理解できなかったかもしれないけど著者が伝えようとした怒りは伝わってきたように思う。アメリカの自己中心主義は今に始まったことではないけど、今後発展途上国が経済的に自立しようとするたびに、アメリカの押し付け民主主義の被害を受けるのではないかと心配になる。日本についてはもっと見直さないと、という気にさせる。