華岡青洲の妻 有吉佐和子 [小説]
麻酔薬の使われ初めには、こんな壮絶な嫁姑の戦いもあったんだ…。話は青洲が不在の間に結婚するという妙な形で始まる。最初、まだ青洲が嫁姑の間に存在しないときには、姑は理想の女性のように描かれている。ところが青洲が家に戻ってきた途端、姑の態度が一変する。嫁姑間の青洲の取り合いという感じ。その中で麻酔薬の人体実験の被験者に嫁と姑のどちらかを使うということになる。それが青洲のためになるのなら自分の身を危険にさらしてもかまわないという二人の女。母親のプライドを損なわないように、しかも年齢や体のことも気遣って青洲が決断したことは、すごいなと思う。そしてこのことがその後の医学に与えた影響は推し量れないほど大きなものなんだと思う。これが欧米での話ではなく、日本での話であることにも驚くが、欧米であったならこれほど献身的な母親や妻は出てこなかったかもしれない。それはそうと、嫁姑が仲良くないのって日本だけじゃないよね?
結構最近にドラマ化されていたようだったけど、やっぱり私の頭の中でのイメージが既に作られていたから、それを壊されるのがいやで見なかった。映像化されると、自分が持っていたイメージがずれるのと、自分が好きな場面が省略されていたりするのと、細かい部分までは描写されきらないのでがっかりすることが多いのよね。
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