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沈まぬ太陽  山崎豊子 [小説]

 読んでいる間中、ずっと眉間に皺が寄っていたかもしれない。でも途中でやめられない。読む前は、5巻まであるので読みきることができるか心配で、1巻と2巻だけ買って読んでみた。主人公の置かれている理不尽な状況を把握するまで少し時間がかかる。大きな組織の恐ろしさ、現場と経営側の認識の乖離、出世、人生、家族、命、それらのものを改めて考え直させられる。一応2巻までだけで読み終わることもできる構成になっていた。でもすぐに後の3冊を買って読むことになった。御巣鷹山事件はまだ記憶に残っているだけに、何度もため息が出る。
 山崎豊子さんの本は重そうで読んだことがなかったけど、この本を読んだ後、他の小説も読みたくなって読み始めることになった、きっかけの小説だった。

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫


沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下)

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫


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泣きはらした話その3「アルジャーノンに花束を」  ダニエル キイス [小説]

 学生の頃の先輩が、本を読んで感動したいならこの本、と言っていた。題名はよく聞いていた。でもひねくれものなので、みんなが読んでいるときに流行に乗ったように読むのは何となく嫌だったので、あまり騒がれなくなった頃に読んでみた。騒がれていたのは知っていたけどどういうストーリーかは全く知らなかった。
 アルジャーノンとはねずみの名前だった。そして主人公と共に脳の実験の被験者である。天才になっていき、天才になってしまったがゆえにその後の自分の行く末が分かってしまう。が、最後は自分が不幸と思ってはいない。幸せだと思っている。そこが泣けてしまう。人間の素直さ、賢さ、意地悪さ、知性、そういうものの性質とか係わり合いとかを考えた。自分はどこの部類に入るだろうか、確かに外見で人を評価してるかもしれない、驕ってはいないだろうか、と反省させられた。
 ひらがなのつたない文章から、難しい言葉の混じった文章へ、そしてまたひらがなの文章へ変化していく。原文から翻訳するのも大変な作業なんだろうけど、やりがいがあるんだろうと思う。
 片手間に翻訳をやりたいと一時期思ったことがある。好きな本を読めるし、それでお金がもらえるなら、と思った。でもほんとにやるなら、英語圏の文化をちゃんと知らないとできない、聖書も知らないと分からない部分がたくさんある、勉強し続けないとできない大変な仕事だ、ということがある時分かって、とても片手間で出来る仕事じゃないと思った。著者の伝えたいことを、ニュアンスも含めて正しく読者に伝えるということは、責任の重いことだと感じる。

アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を

  • 作者: ダニエル キイス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 新書


アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を

  • 作者: 小尾 芙佐, ダニエル キイス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 単行本


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日蝕  平野啓一郎 [小説]

 平野啓一郎が京大在学中に芥川賞を受賞して話題になった本。まず、漢字が難しい。最初、なかなか読み進まなかった。でも小説の舞台となっているところの下調べとかは、すごく緻密そうで、すごいなあと思いながら読んでいた。最初は全部漢字を確認してたんだけど、途中から面倒になって多少読めなくても感覚的に分かるからそのまま読み進んでいったら、その先が気になって仕方ないというような感じで引き込まれていった。描写がうまいのか、クライマックスのシーンは非現実的ではあるはずなんだけど空に吸い込まれていくようになまなまと頭に浮かぶ。三島由紀夫の再来か、と騒がれたことが納得できる。難しい漢字の多用は、何かこだわりがあるんだろうなと思いながら物語の流れだけを追っていってしまったけど、そのこだわりが理解できて漢字を味わうことができたら、もっと楽しむことができるのかなあと思った。

日蝕

日蝕

  • 作者: 平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1998/10
  • メディア: 単行本


日蝕

日蝕

  • 作者: 平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/01
  • メディア: 文庫


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華岡青洲の妻  有吉佐和子 [小説]

 麻酔薬の使われ初めには、こんな壮絶な嫁姑の戦いもあったんだ…。話は青洲が不在の間に結婚するという妙な形で始まる。最初、まだ青洲が嫁姑の間に存在しないときには、姑は理想の女性のように描かれている。ところが青洲が家に戻ってきた途端、姑の態度が一変する。嫁姑間の青洲の取り合いという感じ。その中で麻酔薬の人体実験の被験者に嫁と姑のどちらかを使うということになる。それが青洲のためになるのなら自分の身を危険にさらしてもかまわないという二人の女。母親のプライドを損なわないように、しかも年齢や体のことも気遣って青洲が決断したことは、すごいなと思う。そしてこのことがその後の医学に与えた影響は推し量れないほど大きなものなんだと思う。これが欧米での話ではなく、日本での話であることにも驚くが、欧米であったならこれほど献身的な母親や妻は出てこなかったかもしれない。それはそうと、嫁姑が仲良くないのって日本だけじゃないよね?
結構最近にドラマ化されていたようだったけど、やっぱり私の頭の中でのイメージが既に作られていたから、それを壊されるのがいやで見なかった。映像化されると、自分が持っていたイメージがずれるのと、自分が好きな場面が省略されていたりするのと、細かい部分までは描写されきらないのでがっかりすることが多いのよね。

華岡青洲の妻

華岡青洲の妻

  • 作者: 有吉 佐和子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 単行本


華岡青洲の妻

華岡青洲の妻

  • 作者: 有吉 佐和子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/01
  • メディア: 文庫


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椿と花水木  津本陽 [小説]

 ジョン万次郎の話。ジョン万次郎という名前は聞いたことがあったけど、どういう人かよく知らなかった。くじけそうなときに読んだら勇気をもらえそうな話。面白く読めるのは海外で過ごした前半部分かな。頑張り屋である日本人の性質を持ちながら、フレンドリーな性格で見知らぬところでも英語を覚え、人間関係を築いていく。見習いたい。題名になってる椿と花水木は、本当は子供につけたかった名前でこの辺は読んでいて涙が出る。日本に帰ってきてからの話では、その頃の幕府は包容力に欠けているなと思うけど、今から見るからそう思うだけで、その時代に生きていたらそういう対応が普通と思うのかもしれない。が、島津藩が活力があったのは幕府よりも包容力があったからなんだろう。幕府に島津藩のような先見性があったら、ジョン万次郎はもっと後世に知れ渡るような活躍をしていたんだろうなと少し残念に思う。

椿と花水木―万次郎の生涯〈上〉

椿と花水木―万次郎の生涯〈上〉

  • 作者: 津本 陽
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/06
  • メディア: 文庫


椿と花水木―万次郎の生涯〈下〉

椿と花水木―万次郎の生涯〈下〉

  • 作者: 津本 陽
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/06
  • メディア: 文庫


椿と花水木―万次郎の生涯

椿と花水木―万次郎の生涯

  • 作者: 津本 陽
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1999/05
  • メディア: 単行本


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クロイツェルソナタ、悪魔  トルストイ [小説]

 トルストイの短編。トルストイの長編小説(戦争と平和)で挫折した後、読んだ。「クロイツェルソナタ」は、男の独白という形で語られる。クロイツェルソナタを聴いて妻の不倫を確信する…。トルストイは音楽にも造詣が深かったんだろうなと思った。トルストイの心情描写が私は好き。これをよんでからクロイツェルソナタってどんな曲だろうと思ってCDを買って聴いてみた。で、もう一回その男がクロイツェルソナタについて語ってるところを読んでみて、うーん、なるほど、と思った。室内楽というのは官能的な部分がある。音楽は想像力を刺激するかもしれない…。クロイツェルソナタは、ヴァイオリンソナタで、「クロイツェル」というヴァイオリンの名手のためにベートーベンが作った曲。今は私のお気に入りの一曲になっている。買ったCDでカップリングされていた「春」(これもヴァイオリンソナタ)もよかった。「悪魔」も不倫の話だけど、今、こんなに誠実で正直な男がいるだろうか、と考えてしまう話。

クロイツェル・ソナタ,悪魔

クロイツェル・ソナタ,悪魔

  • 作者: トルストイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1974/06
  • メディア: 文庫


ベートーヴェン : スプリング&クロイツェル・ソナタ

ベートーヴェン : スプリング&クロイツェル・ソナタ

  • アーティスト: シェリング(ヘンリック), ルービンシュタイン(アルトゥール), ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: BMGファンハウス
  • 発売日: 1999/11/20
  • メディア: CD


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泣きはらした話その2「塩狩峠」  三浦綾子 [小説]

 この本は、私が家にいないときに旅行に来た親が、部屋にぽんと置いていったもの。ん?私が買った本じゃないなあ。あ、お母さんが読んで読み終わって置いていったんだな。ということで、読んだ本。
 最初は普通の小説っぽい感じがした。子供の頃からの性格形成に関わる出来事が丁寧に描かれている。キリスト教を信じることに決めてからカリスマ的な存在になるまでがあまり詳しく書かれていない気がするけど、あっという間にカリスマ的な存在になってしまったんだろうなという気もする。本の紹介部分を最初に読んではいたから、最後はこうなるんだろうと分かっていたにも関わらず、最後は頭をがんと殴られたように圧倒されて、読み終わってから1時間くらいは何もできなかった。そしてそれが実在の人物をモデルにした小説ということにも圧倒された。
 キリスト教信者だから、という行為ではなくて、この人の性格、誠実さ、考え方、人となりが表れた行為であるような気がした。
 4月の列車事故のときの職員の対応を見ると、職員皆にこれ、読んだら、と勧めたくなる。

塩狩峠

塩狩峠

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1973/05
  • メディア: 文庫


塩狩峠

塩狩峠

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1968/09
  • メディア: 単行本


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泣きはらした話その1「壬生義士伝」  浅田次郎 [小説]

壬生義士伝 上   文春文庫 あ 39-2

壬生義士伝 上 文春文庫 あ 39-2

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 文庫


壬生義士伝 下   文春文庫 あ 39-3

壬生義士伝 下 文春文庫 あ 39-3

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 文庫


 その日は当直だった。そろそろ皆寝静まった夜の11時前、当直室に入ってふう、と一息ついていたときに、つい目に入ってしまったのがこの文庫本だった。もともと新撰組は好きで、というか司馬遼太郎の「燃えよ、剣」を学生時代に読んで土方歳三のファンになっていて、さらに5年前くらいに函館を旅行したときに初めて写真を見て、「うわ、思ってたよりかっこいい」とさらにファンになっていた。
 で、新撰組の話か、ちょっと読んでみようかな、くらいの気持ちで読み始めた。いつもなら、電話が入ったり、なんだかんだ邪魔が入るのだが、なぜかその日は一度も邪魔が入らなかった。読み始めは、「なにこれ、なんだか読みにくいなあ」と思っていた。場面(時期)が行ったり来たりするし、いまいちぱっとしない男の話みたいだし…。ところが読み進んでいくうちにかなりはまり込んでいた。上の最後のほうはもう既にぼろぼろ泣いていた。上を読み終わったのは1時過ぎだった。でもそのまま寝るには入り込みすぎていた。そのまま誰にも邪魔されないまま下に突入し、最後まで読んでしまった。読み終わったのは4時前くらい。故郷や家族を思う気持ち、故郷に残してきた長男と、長男の学校での話にも泣かされ、長男が函館まで行くところにも泣かされ、「参った」。浅田次郎の本はそれまで読んだことがなく、「鉄道員」の映画を見ただけだったのでよく知らなかったが、うまい、と思った。映画化もドラマ化もされているけれど、私の中でのイメージが壊れてしまいそうなのでどちらも見ていない。見た人によると映画もドラマもよかった、というので、見ようかどうしようか迷っている。
 翌朝赤く腫れた私の眼を見て、「昨日大変だったの?」と寝られないほど仕事があったかと思われてしまった。
 ついでにNHKの大河ドラマ「新選組!」は、土方歳三がかっこよかったのと演技もよかったので、個人的にはまあまあ気に入っている。けど函館まで行かなかったのがちと残念。

燃えよ剣 (上巻)

燃えよ剣 (上巻)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1972/05
  • メディア: 文庫


燃えよ剣 (下巻)

燃えよ剣 (下巻)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1972/06
  • メディア: 文庫


鉄道員(ぽっぽや)

鉄道員(ぽっぽや)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫


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